地域の産業振興と「学び」の努力~富岡製糸場と滋賀の宮村から~

世界遺産に登録される富岡製糸場が、連休中賑わっているようです。地元の研究家によると、富岡製糸場は、女工にも読み書き計算を教えたことが西洋の製糸技術に日本独自の工夫を加える素地となり、世界の製糸産業に大変革をもたらしたとのこと。「学び」の努力(社員教育)が、社員ひとり一人のより質の高い作業や技術を産み出し、近代日本の発展の土台となってきたことは間違いありません。また、富岡製糸場が、富岡市に移管されるまでの18年間、企業が毎年1億円をかけて保存してきたことも注目すべきことで、「売らない、貸さない、壊さない」に徹した当時の社長の文化財への眼差しと心意気には驚きます。このように、富岡製糸場の産業と教育の一体化は、日本の近代化をうながしました。

一方、滋賀県でも大正から昭和にかけて「産業と教育」をスローガンに地域づくりを進め、全国から注目された地域がありました。甲賀市甲南町の県境にある宮村地域です。「農村更正の活資料」が宮地区自治振興会から復刻されました。これによると、地域づくりは、「自力更正のかけ声やその必要論ではなく、現実に適合する手段と方法と内容を具体的に検討し具現化することが重えいる要であり、社会共同の根本精神を培い育てるあらゆる文化的機構、特に教育的計画が確立されなければならない」と明言しています。農村更正の計画実行には、住民自らが産業と教育を自覚して進めなければならないとしていた点で、富岡製糸場の「学び」の努力と共通していると思います。滋賀のこれからの地域づくりに大いに参考にしていきたいと思います。